2010年8月17日火曜日

イケアの強さはカンプラード氏の禁欲的でブレない精神

8月16日の日経MJ「底流を読む」(消費産業部次長:中村直文氏)を読みつつメモ。

イケアが船橋に日本1号店を開業してから5年目を迎える。いまでは横浜、大阪など5店を数え、もうゆるぎない地位を築いていると言っても過言ではないだろう。

私と同じような年代の方々はご存知の方が多いが、イケアは一度日本に進出し、失敗していることは意外と知られていない。イケアが最初に日本進出をする何年か前のことだが、私が当時勤めていた会社にある商社を通じて、イケアから業務提携の打診があったと記憶している。当時は日本進出を有店舗販売ではなく、通販という形でスタートさせようとしていたはず。日本での商売のやり方がわからずどこかと組もうとしていたのは間違いない。

そんな過去もあったが、MJのコラムによると、全世界で3兆円を超えるイケアが気候風土や生活文化の違いという壁を乗り越え、ここまで日本市場をこじ開けたのは創業者であるイングヴァル・カンプラード氏の禁欲的な精神とブレない組織風土によるものが大きいとしている。

「無駄遣いは人類最大の病の一つ」と話すカンプラード氏の節約ぶりは有名だそうだ。3年前に来日した際もエコノミーでホテルも標準レベルだった。

これについては、もっともだと思いながらも賛成はできない。私自身「無駄遣いは美徳」とまでは言わないものの、消費生活を楽しいものにしている(後悔の念も含め)のは「無駄遣い」という非科学的な行動があるからにほかならないと思うし、イケアを訪問した方の多くは大量の無駄遣いをしていると思われる。イケアの場合は、アイテムごとの単価が安いため、そうダメージにはならないが。

無駄遣いを科学的に解明するほうが社会の役に立つような気がするねなあ。

その来日の際、ジャパン社長のペーテルソン氏が「夕食はどこへ行きますか」と尋ねると、「吉野家に行きたい」と即答したそうだ。夕食代を惜しんだわけではなく、単純に日本に根付いた生活文化を知りたかったのだろう。「消費者の役に立つことが最大の使命で、そのために人の望んでいるものを知らなくてはならない。」とは彼の口癖だそうだ。

これはもうまったくその通りで、ヒットするもの(こと)とは顕在化していないニーズに対し、適正な場所、適正な価格、適正なチャネルで供給できるかどうかにかかっている。

目先の利益より「買い物客の行動を知り尽くせ」というカンプラード氏の精神は入社時に叩き込まれている(ペーテルソン氏)

すばらしい精神です。小売業はこうあるべきお手本のような考えです。当たり前のことが一番むずかしい。実践し続けるのはなおさらだ。松下幸之助さんや中内功さんなどもすべて同じ精神だ。

イケアの観察眼は徹底している。一般家庭に入り込み、年中行事のように生活ぶりを観察するそうだ。そのサンプル数は数え切れない。ただ、それだけには飽き足らず、埼玉県八潮市の団地の一室を借り、日本の住居環境を分析したほか、今年に入り、スウェーデンにある創業の地に3LDKのモデルルームまで作ったそうだ。こうした学習の連続で梁(はり)、押入れ、畳といった日本独自のものや暮らし向きを把握しながら、ノウハウを蓄積してきたのだ。

一方で「布団やこたつは売れるとわかっていても置かない」というブレない姿勢を持つ。品揃えを広げすぎると、製造コストが上昇し、全世界に低価格品を提供するという経営理念が崩れるから。

あくまで商品は全世界共通で、その中で最大の顧客満足を引き出そうとするのが基本の考えである。世界市場を網にかけながらもすべての顧客を追わず、理念と限界を見極める感覚がイケアをグローバルでローカルな「グローカル」企業として成功に導いたのだ。

中村氏は最後にこう結んでいる「海外進出を目指す日本企業にとって大きな壁でもあり、お手本でもある。」と。

私が所属する企業はこれから売上拡大を目指すにあたり、新規商品開発や新規事業開発という局面で今後いろいろなことを考えていかねばならない。理念やブランディングを強く標榜しすぎたあまり、失敗してきた企業も多いし、迎合しすぎると経営理念は一気にブレてしまう。「らしさ」を演出するには何が最低限必要なことなのか、勝負するポイントは?などなど、企業が新規事業に取り組んだりするときなど、大切なことがこの「イケアの強さ」に詰まっていたと思う。

Posted via email from onisato's posterous

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